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仮想通貨ビジネスの近時の動向と法的論点
特集 2018年3月

仮想通貨ビジネスの近時の動向と法的論点

2018年3月
更新日 2018年3月29日
業務分野 ファイナンス



1 概要

2017年4月に資金決済に関する法律(「資金決済法」)の改正法が施行され、日本の法律において初めて「仮想通貨交換業」にかかる規制が導入されました。このような仮想通貨ビジネスに特化した規制の導入は、一部の例外を除けば国際的にみても先進的な取組みであり、日本における仮想通貨ビジネスの状況及びこれに対する規制の運用が注目を集めています。

そこで、以下では、仮想通貨ビジネスの近時の動向をご紹介するとともに、これらに係る法的論点を概説します。

2 主要なビジネスと法的論点

(1)仮想通貨交換業

仮想通貨交換業とは、次の行為のいずれかを業として行うことをいいます(資金決済法2条7項)。

  1. 仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換
  2. ①に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理
  3. その行う①、②に掲げる行為に関して、利用者の金銭又は仮想通貨の管理をすること

仮想通貨交換業を行うためには、財務局の登録を受ける必要があるところ(同法63条の2)、現在、登録業者数は16社となっています(金融庁ウェブサイト「仮想通貨交換業登録一覧」(2018年3月7日現在))。

仮想通貨交換業に該当する典型的なビジネスとして、顧客同士の仮想通貨の売買を媒介する場合(取引所)、顧客との間で自らが当事者となって仮想通貨の売買を行う場合(販売所)が挙げられます。

また、下記(2)に関連して、日本でイニシャル・コイン・オファリング(「ICO」)を実施する場合で、発行されるトークンが資金決済法上の仮想通貨に該当するときは、トークン発行体が自ら仮想通貨交換業の登録を取得するか、仮想通貨交換業者である既存の仮想通貨取引所に販売を委託する必要があるものと考えられます。今後、こうしたICOにおいて発行されるトークンの販売を受託するプラットフォーム型の登録業者が増加することも予想されます。


(2)イニシャル・コイン・オファリング(ICO)

ICOとは、企業等が電子的にトークン(証票)を発行して、公衆から資金調達を行う行為をいいます。2017年におけるICOによる資金調達額は、グローバルベースでは円に換算して4000億円超との報道もなされており、主にスタートアップ企業の新たな資金調達方法として注目されています。他方で、短期間に世界中から資金を集められるというICO の特徴を不正に利用した詐欺的行為やその他不適切な事案が増加することも懸念されています。

日本法においては、ICOで発行されるトークン(「ICOトークン」)が仮想通貨に該当する場合には、ICOの実施は仮想通貨交換業に該当し、資金決済法の規制対象となります。また、ICOトークンが前払式支払手段に該当する場合には資金決済法により、また有価証券に該当する場合には金融商品取引法(「金商法」)により規制されることとなります。

また、ICOは国境をまたいで行われることが通常であるため、販売される国・地域に応じて適用される法規制が異なることになります。現在、世界的にICOに対する規制が検討されています。


(3)仮想通貨投資ファンド

近時、複数の投資家から出資を募り、当該出資をもって運用者が仮想通貨(以下、本項においては、ICOトークンを含む)へ投資し、得られた収益を出資比率に応じて投資家に分配するという、仮想通貨投資ファンドが現れています。

投資対象が仮想通貨であることを除けば、スキーム自体は通常の投資ファンドと同様です。したがって、スキーム(ファンドの法形式その他)によっては、当該ファンドに対する出資者の権利は集団投資スキーム持分(金商法2条2項5号)に該当する可能性があり、その場合、ファンド運営者が出資の募集又は私募を行うためには、原則として、第二種金融商品取引業の登録が必要となります(金商法28条2項1号、2条8項7号へ)。

仮想通貨投資ファンドについては、投資対象が仮想通貨であることから、株式等の有価証券と異なる性質のリスクが認められます(たとえば、サイバー攻撃のリスク、ハードフォークによる分岐リスク等)。このため、適合性の原則(金商法40条1号)の観点から、仮想通貨投資ファンドへの出資の勧誘を行う場合、対象投資家の属性として、仮想通貨投資についての知識・経験等、有価証券投資とは異なる考慮が必要ではないか等、慎重な検討が必要となります。


(4)クラウドマイニング

一般に、クラウドマイニングとは、投資家がビットコイン等の仮想通貨のマイニングを行う事業者に対して出資し、当該事業者がマイニングにより得た仮想通貨を出資割合に応じて分配する仕組みをいいます。なお、マイニングとは、ビットコインを例にとると、新しい取引を検証し、ブロックチェーン上に記録する作業をいい、マイニングを行った者(マイナー)はその報酬として、新たに発行されるビットコイン及び記録された取引から得られる取引手数料を得ることができます。

最近、日本でもマイニングビジネスに参入する意向を表明する企業が現れており、今後、クラウドマイニング事業が日本でも展開されることも予想されます。

クラウドマイニングの具体的なスキームは様々な態様が考えられるところ、スキームによっては金商法等の規制対象となる可能性があるものと考えられます。

3 みなし仮想通貨交換業者からのNEM不正送信事件

本年1月26日、日本のみなし仮想通貨交換業者が顧客から預託を受けていた仮想通貨NEM(通貨単位XEM)が、不正に外部へ送信され、5億2300万XEMが流出する事件が発生しました(「NEM不正送信事件」)。同社は、同月28日、不正に送信されたNEMの保有者全員に対して、保有数に応じて日本円で補償する方針を打ち出しましたが、同社に対しては、翌29日に関東財務局から、事実関係及び原因の究明や、顧客への適切な対応等を求める内容の業務改善命令が発出されています。

また、金融庁は、同社以外のみなし仮想通貨交換業者15社及び登録済み仮想通貨交換業者16社に対してシステムリスク管理態勢に関する報告徴求命令を発出しています。そのため、NEM不正送信事件以降、仮想通貨交換業の登録申請にあたり、顧客資産の管理方法やシステムリスク管理態勢等について、より一層厳格に審査されるようになることが予想されます。

4 AMTによるサポート

以上のように、仮想通貨に関するビジネスとして、典型的な仮想通貨取引所以外にも、資金調達手法としてのICOやそのプラットフォームに関わるビジネス、ICO投資ファンドやクラウドマイニングなど、新たなビジネスモデルが次々と現れています。上記のNEM不正送信事件を契機に、当局の監督姿勢が厳しさを増し、今後新たな規制が導入されることも考えられますが、長期的にはこのようなビジネスは一層の展開を見せることが予想されます。

このような全く新しいビジネスモデルについては、依頼者の構想やビジネスアイデアを正しく理解し、既存のビジネスモデルにとらわれない柔軟な発想とスピード感をもってサポートすることが重要と考えております。当事務所では、仮想通貨交換業登録案件、ICO案件、仮想通貨投資ファンド案件、クラウドマイニング案件を含め仮想通貨に関する様々なアドバイス・法的サポートを提供してきた実績を有しており、今後も日本における仮想通貨ビジネスの健全な発展をサポートしていく方針です。

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