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仮想通貨(暗号資産)ビジネスの近時の動向と法的論点
特集 2019年7月

仮想通貨(暗号資産)ビジネスの近時の動向と法的論点

2019年7月
更新日 2019年7月11日
業務分野 ファイナンス



1 概要

2017年4月に資金決済に関する法律(「資金決済法」)の改正法が施行され、日本の法律において初めて「仮想通貨交換業」にかかる規制が導入されました。このような仮想通貨ビジネスに特化した規制の導入は、一部の例外を除けば国際的にみても先進的な取組みであり、日本における仮想通貨ビジネスの状況及びこれに対する規制の運用が注目を集めています。

もっとも、2018年、不正アクセスにより仮想通貨交換業者が管理する顧客の仮想通貨が外部に流出するという事案(「受託仮想通貨流出事案」)が複数発生したほか、金融庁の立入検査を通じて、事業規模の急拡大に仮想通貨交換業者の内部管理態勢の整備等が追いついていない実態が把握されました。かかる事態を受けて、仮想通貨交換業の適正な実施を確保し、その健全な発展及び仮想通貨交換業の利用者の利益の保護に資することを目的として一般社団法人日本仮想通貨交換業協会(「JVCEA」)が設立され、2018年3月29日、資金決済法に基づく認定資金決済事業者協会として認定されました。

また、仮想通貨が投機の対象になっていることや、証拠金を用いた仮想通貨の取引や仮想通貨による資金調達など、資金決済法改正当時に想定していなかった状況が現れてきたことから、金融庁は、仮想通貨交換業等を巡る諸問題について制度的な対応を検討するため、「仮想通貨交換業等に関する研究会」(「本研究会」)を2018年3月に設置しました。本研究会は、11回にわたる議論を重ね、2018年12月21日、仮想通貨に関する新たな法制度についての検討結果を取り纏めた「仮想通貨交換業等に関する研究会 報告書」(「本報告書」)を公表しました1 。本報告書における検討内容を踏まえて、金融庁は、2019年3月15日、資金決済法並びに関連する金融商品取引法(「金商法」)及び金融商品の販売等に関する法律(「金販法」)等の改正を含む、「情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案」を第198回通常国会へ提出し、5月31日、参議院本会議において可決され、成立しました(以下、その全体を「改正法」と呼称するとともに、各法律に係る改正法について、「資金決済法改正法」、「金商法改正法」、「金販法改正法」といいます。)2。改正法は6月7日に交付されているところ、改正法は公布日から起算して 1 年を超えない範囲内の政令指定日からの施行が予定されています(改正法附則1条)。

このように、仮想通貨ビジネスを取り巻く外部環境は急速に変化しており、改正法の施行を見据えた対応も必要となります。そこで、以下では、これらの外部環境の変化を踏まえた仮想通貨ビジネスの近時の動向をご紹介するとともに、これらに係る法的論点を概説します。

2 主要なビジネスと法的論点

(1)仮想通貨交換業

仮想通貨交換業(資金決済法改正法においては「暗号資産交換業」と呼称されます。)とは、次の行為のいずれかを業として行うことをいいます(資金決済法2条7項)。

  1. 仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換
  2. ①に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理
  3. その行う①、②に掲げる行為に関して、利用者の金銭又は仮想通貨の管理をすること

なお、上記③に関して、資金決済法改正法においては、仮想通貨の売買等を行わずに、利用者の仮想通貨を管理し、利用者の指図に基づき利用者が指定するアドレスに仮想通貨を移転させる業務(「暗号資産カストディ業務」)についても暗号資産交換業に含まれるようになることに注意が必要です(資金決済法改正法2条7項4号)(下記4参照)。

仮想通貨交換業を行うためには、財務局の登録を受ける必要があるところ(同法63条の2)、現在、登録 業者数は19社となっています(金融庁ウェブサイト「仮想通貨交換業登録一覧」(2019年6月11日現在))。

仮想通貨交換業に該当する典型的なビジネスとして、顧客同士の仮想通貨の売買を媒介する場合(取引所 )、顧客との間で自らが当事者となって仮想通貨の売買を行う場合(販売所)が挙げられます。

なお、前記1のとおり、金融庁は、複数の受託仮想通貨流出事案が発生したことを踏まえ、仮想通貨交換業者に対する監督を強化する方針を示す一方、仮想通貨交換業への新規参入を希望する事業者が多様かつ多数に上ることから、仮想通貨交換業者の登録審査における透明性の向上に向けた取組みとして、その審査プロセス及び時間的な目安について公表するとともに3 、登録審査を希望する各事業者が提出すべき「仮想通貨交換業者の登録審査に係る質問票」4 (「質問票」)を公表しています。ただし、質問票の項目が400項目超に上り、各項目について詳細な回答・添付資料の作成が求められて いるなど、登録審査のハードルは依然として高いものといえます。


(2)イニシャル・コイン・オファリング(ICO)

イニシャル・コイン・オファリング(「ICO」)とは、企業等が電子的にトークン(証票)を発行して、公衆から資金調達を行う行為をいいます。

日本法においては、ICOで発行されるトークン(「ICOトークン」)が仮想通貨に該当する場合には、ICOの実施は仮想通貨交換業に該当し、資金決済法の規制対象となります。日本でICOを実施する場合で、発行されるトークンが資金決済法上の仮想通貨に該当するときは、トークン発行体が自ら仮想通貨交換業の登録を取得するか、仮想通貨交換業者である既存の仮想通貨取引所に販売を委託する必要があるものと考えられます。

また、ICOトークンが前払式支払手段に該当する場合には資金決済法により、有価証券に該当する場合には投資に関する金融規制を要するICO(Security Token Offering)(「STO」。金商法改正法においては「電子記録移転権利」として規定されています。)として金商法により規制されることとなります。


(3)仮想通貨投資ファンド

近時、複数の投資家から出資を募り、当該出資をもって運用者が仮想通貨(以下、本項においては、ICOトークンを含む)へ投資し、得られた収益を出資比率に応じて投資家に分配するという、仮想通貨投資ファンドが現れています。

投資対象が仮想通貨であることを除けば、スキーム自体は通常の投資ファンドと同様です。したがって、スキーム(ファンドの法形式その他)によっては、当該ファンドに対する出資者の権利は集団投資スキーム持分(金商法2条2項5号)に該当する可能性があり、その場合、ファンド運営者が出資の募集又は私募を行うためには、原則として、第二種金融商品取引業の登録が必要となります(金商法28条2項1号、2条8項7号へ)。

仮想通貨投資ファンドについては、投資対象が仮想通貨であることから、株式等の有価証券と異なる性質のリスクが認められます(たとえば、サイバー攻撃のリスク、ハードフォークによる分岐リスク等)。このため、適合性の原則(金商法40条1号)の観点から、仮想通貨投資ファンドへの出資の勧誘を行う場合、対象投資家の属性として、仮想通貨投資についての知識・経験等、有価証券投資とは異なる考慮が必要ではないか等、慎重な検討が必要となります。


(4)クラウドマイニング

一般に、クラウドマイニングとは、投資家がビットコイン等の仮想通貨のマイニングを行う事業者に対して出資し、当該事業者がマイニングにより得た仮想通貨を出資割合に応じて分配する仕組みをいいます。なお、マイニングとは、ビットコインを例にとると、新しい取引を検証し、ブロックチェーン上に記録する作業をいい、マイニングを行った者(マイナー)はその報酬として、新たに発行されるビットコイン及び記録された取引から得られる取引手数料を得ることができます。

最近、日本でもマイニングビジネスに参入する意向を表明する企業が現れており、今後、クラウドマイニング事業が日本でも展開されることも予想されます。

クラウドマイニングの具体的なスキームは様々な態様が考えられるところ、スキームによっては金商法等の規制対象となる可能性があるものと考えられます。


(5)Non Fungible Token(NFT)とブロックチェーンゲーム

Non Fungible Token(NFT)とは、ブロックチェーン上で発行されるトークンであり、トークン自体に固有の値を持たせた代替性のない(Non Fungible)トークンをいいます。NFTは、デジタルデータでありながら、他に同じものが存在しない唯一無二のデータとして、特定物(特定のデータ)を表章するトークンとして利用することが可能となります。

最近は、ゲーム上のアイテムをブロックチェーン上のトークンとして発行し、ブロックチェーン上で移転可能とするなど、ブロックチェーンを活用したゲーム(「ブロックチェーンゲーム」)において、当該アイテムに個性を持たせるためにNFTが利用されるケースが増えてきています。NFTとして発行されたアイテムはブロックチェーン上で不特定の間で流通する可能性がありますが、代替性がなく決済手段としての性質が乏しいものであれば仮想通貨に該当しないと考えられる場合がある一方、当該アイテムの獲得に際して、いわゆる「ガチャ」の仕組みを採用する場合などには、賭博罪(刑法185条)に該当しないか等が問題となります。

このように、NFTを活用したブロックチェーンゲームと法的問題点の有無については、各ブロックチェーンゲームの仕様に応じて個別具体的な分析が必要となります。

3 日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)による自主規制ルールの策定

上記1のとおり、受託仮想通貨流出事案を受けて、仮想通貨交換業の適正な実施を確保し、その健全な発展及び仮想通貨交換業の利用者の利益の保護に資することを目的として、2018年3月、JVCEAが資金決済法に基づく認定資金決済事業者協会として認定されました。JVCEAは、現時点(2019年7月11日現在)において、登録済み仮想通貨交換業者が入会する第一種会員19社、仮想通貨交換業登録の申請中の事業者又は申請を予定する事業者が入会する第二種会員7社から構成されています。また、JVCEAは、①自主規制規則5の制定、②会員に対する検査、③会員に対する指導、勧告及び処分、④業務相談、⑤利用者からの苦情受付、⑥情報提供、及び⑦会員データを集計した統計調査を主な業務内容としています。自主規制規則の内容は多岐にわたりますが、仮想通貨交換業者への金融庁検査の結果等を踏まえて、特に、(ⅰ)経営管理・内部統制、(ⅱ)システムリスク・サイバーセキュリティ、(ⅲ)AML/CFT(Anti-Money Laundering / Countering the Financing of Terrorism)、(ⅳ)新規仮想通貨の取扱い、(ⅴ)広告・勧誘について、法令以上に詳細な内容が盛り込まれた諸規則が制定されています。なお、「証拠金取引に関する規則」、「不適正取引の防止のための取引審査体制の整備に関する規則」及び「財務管理に関する規則」等において、金商法、日本証券業協会の自主規制規則、金融先物取引業協会の自主規制を参考にしたと思われる記述が多く見られることも特徴の一つとして挙げられます。

4 改正法の概要

上記1のとおり、2019年5月31日、改正法が参議院本会議において可決され、成立しました。改正法においては、①「仮想通貨」から「暗号資産」への呼称の変更、②暗号資産カストディ業務に対する規制の追加、③暗号資産交換業の業務に関する規制の強化等、④電子記録移転権利の創設及びこれに対する規制の適用、⑤暗号資産デリバティブ取引に対する規制の創設、⑥暗号資産又は暗号資産デリバティブの取引に関する不公正な行為に関する規制の創設、⑦暗号資産の販売等に対する金販法の適用、をその骨子としています。改正法は2019年6月7日に公布され、公布から 1年以内に施行されますが、これにより日本の仮想通貨法制は大幅に変更されることとなります。改正法の詳細については、当事務所の 2019 年4月付ニュースレター「暗号資産に関する改正資金決済法等について」をご参照ください6

ICOについては、トークンの機能やリスクに応じて資金決済法又は金商法で規制することとし、現行の資金決済法に足りない規制を補う内容の法改正が志向されています。具体的には、ICOにより発行されるトークンの性質に応じて、①投資に関する金融規制を要するICO(Security Token Offering)(「STO」)と、②決済に関する金融規制を要するICOとに分類されます。そして、①については投資性を有するものとして金商法によって規制する一方、②については資金決済法上の仮想通貨に該当するものとして資金決済法によって規制することが検討されています。本報告書に示されたICO規制の方向性については、当事務所キャピタルマーケッツグループ2018年12月「日米におけるICO規制~研究会報告書とSECパブリック・ステートメントを題材に~」をご参照ください 6

5 AMTによるサポート

以上のように、仮想通貨に関するビジネスとして、典型的な仮想通貨取引所以外にも、資金調達手法としてのICOやSTO、仮想通貨投資ファンドやクラウドマイニング、NFTを活用したブロックチェーンゲームなど、新たなビジネスモデルが次々と現れています。一方で、上記の受託仮想通貨流出事案等を受け、JVCEAより仮想通貨交換業者を対象とした自主規制規則が策定され、また、ICOやSTOなど、資金決済法改正当時に想定されていなかったビジネスに対応した規制を行うべく、所要の改正を盛り込んだ改正法が成立し、来年前半には施行されることが見込まれています。

このように仮想通貨ビジネスを取り巻く規制環境は激動していますが、このような状況においては、特に、依頼者の構想やビジネスアイデアを正しく理解したうえで、改正法の施行も見据えて適切な法的対応についてスピード感をもってアドバイスすることが重要と考えております。当事務所は、仮想通貨交換業登録案件、ICO案件、仮想通貨投資ファンド案件、クラウドマイニング案件、NFTを活用したブロックチェーンゲームを含め仮想通貨に関する様々なアドバイス・法的サポートを提供してきた実績を有しており、今後も日本における仮想通貨ビジネスの健全な発展をサポートしていく方針です。

1:https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20181221-1.pdf
2:https://www.fsa.go.jp/common/diet/index.html
3:https://www.fsa.go.jp/news/30/virtual_currency/20190111.pdf
4:https://www.fsa.go.jp/news/30/virtual_currency/20181024-2.pdf
5:https://jvcea.or.jp/about/rule/
6:https://www.amt-law.com/asset/pdf/bulletins2_pdf/190409.pdf

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