HOME 著書・論文・ニュースレター等
仮想通貨ビジネスの近時の動向と法的論点
特集 2019年3月

仮想通貨ビジネスの近時の動向と法的論点

2019年3月
更新日 2019年3月6日
業務分野 ファイナンス



1 概要

2017年4月に資金決済に関する法律(「資金決済法」)の改正法が施行され、日本の法律において初めて「仮想通貨交換業」にかかる規制が導入されました。このような仮想通貨ビジネスに特化した規制の導入は、一部の例外を除けば国際的にみても先進的な取組みであり、日本における仮想通貨ビジネスの状況及びこれに対する規制の運用が注目を集めています。

もっとも、2018年、不正アクセスにより仮想通貨交換業者が管理する顧客の仮想通貨が外部に流出するという事案(「受託仮想通貨流出事案」)が複数発生したほか、金融庁の立入検査を通じて、事業規模の急拡大に仮想通貨交換業者の内部管理態勢の整備等が追いついていない実態が把握されました。かかる事態を受けて、仮想通貨交換業の適正な実施を確保し、その健全な発展及び仮想通貨交換業の利用者の利益の保護に資することを目的として一般社団法人日本仮想通貨交換業協会(「JVCEA」)が設立され、2018年3月29日、資金決済法に基づく認定資金決済事業者協会として認定されました。

また、仮想通貨が投機の対象になっていることや、証拠金を用いた仮想通貨の取引や仮想通貨による資金調達など、資金決済法改正当時に想定していなかった状況が現れてきたことから、金融庁は、仮想通貨交換業等を巡る諸問題について制度的な対応を検討するため、「仮想通貨交換業等に関する研究会」(「本研究会」)を2018年3月に設置しました。本研究会は、11回にわたる議論を重ね、2018年12月21日、仮想通貨に関する新たな法制度についての検討結果を取り纏めた「仮想通貨交換業等に関する研究会 報告書」(「本報告書」)を公表しました1 。本報告書における検討内容を踏まえて、本年の通常国会において所要の法改正が行われる見通しです。

このように、仮想通貨ビジネスを取り巻く外部環境は急速に変化しています。そこで、以下では、これらの外部環境の変化を踏まえた仮想通貨ビジネスの近時の動向をご紹介するとともに、これらに係る法的論点を概説します。

2 主要なビジネスと法的論点

(1)仮想通貨交換業

仮想通貨交換業とは、次の行為のいずれかを業として行うことをいいます(資金決済法2条7項)。

  1. 仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換
  2. ①に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理
  3. その行う①、②に掲げる行為に関して、利用者の金銭又は仮想通貨の管理をすること

仮想通貨交換業を行うためには、財務局の登録を受ける必要があるところ(同法63条の2)、現在、登録 業者数は17社となっています(金融庁ウェブサイト「仮想通貨交換業登録一覧」(2019年1月31日現在))。

仮想通貨交換業に該当する典型的なビジネスとして、顧客同士の仮想通貨の売買を媒介する場合(取引所 )、顧客との間で自らが当事者となって仮想通貨の売買を行う場合(販売所)が挙げられます。

なお、前記1のとおり、金融庁は、複数の受託仮想通貨流出事案が発生したことを踏まえ、仮想通貨交換業者に対する監督を強化する方針を示す一方、仮想通貨交換業への新規参入を希望する事業者が多様かつ多数に上ることから、仮想通貨交換業者の登録審査における透明性の向上に向けた取組みとして、その審査プロセス及び時間的な目安について公表するとともに2 、登録審査を希望する各事業者が提出すべき「仮想通貨交換業者の登録審査に係る質問票」3 (「質問票」)を公表しています。ただし、質問票の項目が400項目超に上り、各項目について詳細な回答・添付資料の作成が求められて いるなど、登録審査のハードルは依然として高いものといえます。


(2)イニシャル・コイン・オファリング(ICO)

イニシャル・コイン・オファリング(「ICO」)とは、企業等が電子的にトークン(証票)を発行して、公衆から資金調達を行う行為をいいます。

日本法においては、ICOで発行されるトークン(「ICOトークン」)が仮想通貨に該当する場合には、ICOの実施は仮想通貨交換業に該当し、資金決済法の規制対象となります。日本でICOを実施する場合で、発行されるトークンが資金決済法上の仮想通貨に該当するときは、トークン発行体が自ら仮想通貨交換業の登録を取得するか、仮想通貨交換業者である既存の仮想通貨取引所に販売を委託する必要があるものと考えられます。

また、ICOトークンが前払式支払手段に該当する場合には資金決済法により、有価証券に該当する場合には金融商品取引法(「金商法」)により規制されることとなります。 (ICOに対する規制に関して本報告書が示した方向性については、下記4.をご参照ください。)


(3)仮想通貨投資ファンド

近時、複数の投資家から出資を募り、当該出資をもって運用者が仮想通貨(以下、本項においては、ICOトークンを含む)へ投資し、得られた収益を出資比率に応じて投資家に分配するという、仮想通貨投資ファンドが現れています。

投資対象が仮想通貨であることを除けば、スキーム自体は通常の投資ファンドと同様です。したがって、スキーム(ファンドの法形式その他)によっては、当該ファンドに対する出資者の権利は集団投資スキーム持分(金商法2条2項5号)に該当する可能性があり、その場合、ファンド運営者が出資の募集又は私募を行うためには、原則として、第二種金融商品取引業の登録が必要となります(金商法28条2項1号、2条8項7号へ)。

仮想通貨投資ファンドについては、投資対象が仮想通貨であることから、株式等の有価証券と異なる性質のリスクが認められます(たとえば、サイバー攻撃のリスク、ハードフォークによる分岐リスク等)。このため、適合性の原則(金商法40条1号)の観点から、仮想通貨投資ファンドへの出資の勧誘を行う場合、対象投資家の属性として、仮想通貨投資についての知識・経験等、有価証券投資とは異なる考慮が必要ではないか等、慎重な検討が必要となります。


(4)クラウドマイニング

一般に、クラウドマイニングとは、投資家がビットコイン等の仮想通貨のマイニングを行う事業者に対して出資し、当該事業者がマイニングにより得た仮想通貨を出資割合に応じて分配する仕組みをいいます。なお、マイニングとは、ビットコインを例にとると、新しい取引を検証し、ブロックチェーン上に記録する作業をいい、マイニングを行った者(マイナー)はその報酬として、新たに発行されるビットコイン及び記録された取引から得られる取引手数料を得ることができます。

最近、日本でもマイニングビジネスに参入する意向を表明する企業が現れており、今後、クラウドマイニング事業が日本でも展開されることも予想されます。

クラウドマイニングの具体的なスキームは様々な態様が考えられるところ、スキームによっては金商法等の規制対象となる可能性があるものと考えられます。

3 日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)による自主規制ルールの策定

上記1.のとおり、受託仮想通貨流出事案を受けて、仮想通貨交換業の適正な実施を確保し、その健全な発展及び仮想通貨交換業の利用者の利益の保護に資することを目的として、2018年3月、JVCEAが資金決済法に基づく認定資金決済事業者協会として認定されました。JVCEAは、現時点において、登録済み仮想通貨交換業者が入会する第一種会員17社、仮想通貨交換業登録の申請中の事業者又は申請を予定する事業者が入会する第二種会員9社から構成されています。また、JVCEAは、①自主規制規則4の制定、②会員に対する検査、③会員に対する指導、勧告及び処分、④業務相談、⑤利用者からの苦情受付、⑥情報提供、及び⑦会員データを集計した統計調査を主な業務内容としています。自主規制規則の内容は多岐にわたりますが、仮想通貨交換業者への金融庁検査の結果等を踏まえて、特に、(ⅰ)経営管理・内部統制、(ⅱ)システムリスク・サイバーセキュリティ、(ⅲ)AML/CFT(Anti-Money Laundering / Countering the Financing of Terrorism)、(ⅳ)新規仮想通貨の取扱い、(ⅴ)広告・勧誘について、法令以上に詳細な内容が盛り込まれた諸規則が制定されています。なお、「証拠金取引に関する規則」、「不適正取引の防止のための取引審査体制の整備に関する規則」及び「財務管理に関する規則」等において、金商法、日本証券業協会の自主規制規則、金融先物取引業協会の自主規制を参考にしたと思われる記述が多く見られることも特徴の一つとして挙げられます。

4 仮想通貨交換業等に関する研究会報告書の公表

上記1.のとおり、金融庁は、仮想通貨交換業等をめぐる諸問題について制度的な対応を検討するため、本研究会を設置し、2018年12月、仮想通貨に関する新たな法制度についての検討結果を取り纏めた本報告書を公表しました。本報告書では、主に①仮想通貨交換業者を巡る課題への対応、②仮想通貨の不公正な現物取引への対応、③仮想通貨カストディ業務への対応、④仮想通貨デリバティブ取引への対応、⑤ICOへの対応等について検討が行われており、仮想通貨に関する法改正の方向性を示した重要な意義を有するものといえます。本報告書の概要については、当事務所ファイナンスグループ2019年1月「仮想通貨交換業等に関する研究会報告書の概要」をご参照ください5

ICOについては、トークンの機能やリスクに応じて資金決済法又は金商法で規制することとし、現行の資金決済法に足りない規制を補う内容の法改正が志向されています。具体的には、ICOにより発行されるトークンの性質に応じて、①投資に関する金融規制を要するICO(Security Token Offering)(「STO」)と、②決済に関する金融規制を要するICOとに分類されます。そして、①については投資性を有するものとして金商法によって規制する一方、②については資金決済法上の仮想通貨に該当するものとして資金決済法によって規制することが検討されています。本報告書に示されたICO規制の方向性については、当事務所キャピタルマーケッツグループ2018年12月「日米におけるICO規制~研究会報告書とSECパブリック・ステートメントを題材に~」をご参照ください 6

5 AMTによるサポート

以上のように、仮想通貨に関するビジネスとして、典型的な仮想通貨取引所以外にも、資金調達手法としてのICOやSTO、ICO投資ファンドやクラウドマイニングなど、新たなビジネスモデルが次々と現れています。一方で、上記の受託仮想通貨流出事案等を受け、JVCEAより仮想通貨交換業者を対象とした自主規制規則が策定され、また、ICOやSTOなど、資金決済法改正当時に想定されていなかったビジネスに対応した法改正が検討されており、本年中には成立することが見込まれています。

このように仮想通貨ビジネスを取り巻く規制環境は激動していますが、このような状況においては、特に、依頼者の構想やビジネスアイデアを正しく理解したうえで、法改正も見据えて適切な法的対応についてスピード感をもってアドバイスすることが重要と考えております。当事務所は、仮想通貨交換業登録案件、ICO案件、仮想通貨投資ファンド案件、クラウドマイニング案件を含め仮想通貨に関する様々なアドバイス・法的サポートを提供してきた実績を有しており、今後も日本における仮想通貨ビジネスの健全な発展をサポートしていく方針です。

1:https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20181221-1.pdf
2:https://www.fsa.go.jp/news/30/virtual_currency/20190111.pdf
3:https://www.fsa.go.jp/news/30/virtual_currency/20181024-2.pdf
4:https://jvcea.or.jp/about/rule/
5:https://www.amt-law.com/asset/pdf/bulletins2_pdf/190108.pdf
6:https://www.amt-law.com/asset/pdf/bulletins10_pdf/181228.pdf

当該分野に精通する弁護士等

関連する著書・論文・セミナー等