当事務所では、入所後間もない新人弁護士を対象として当初研修を行うほか、継続的に種々の研修プログラムを実施し、所属弁護士による知識の習得とその深化に努めています。また、複数の
プラクティス・グループが、専門的知識の集積と共有、業務の効率化等を目指して、自主的に活動しています。以下その概略を紹介します。
当事務所には、約10名の中堅・若手パートナーにより構成される「教育研修委員会」があり、主として若手アソシエイトによる知識と技能の習得という観点から、所属弁護士のための教育研修制度全般の整備と運営を統括しています。教育研修委員会の取り組みは、例えば、下記の新人研修、英語教育プログラム、継続研修等の各種研修制度の企画と実施や、所内における先例の整理、リサーチ・ツールの整備等、多岐にわたります。また、教育研修委員会は、定期的にすべてのアソシエイトとの個別面接を実施し、各自の執務状況、希望案件等についての具体的な聞きとりや、実務家としてのスキルアップ・プランに関する相談や助言を行うなど、アソシエイトのメンタリングに努めているほか、各種の懇親イベントの企画等を通じて所内交流の発展を促し、「AM&Tらしい風通しの良さ」を維持することにも力を注いでいます。

(1) パートナーおよびシニア・アソシエイトによる当初研修プログラム
大学や法科大学院、司法修習での勉強や経験は実務に出た後に要求される法的思考能力の根幹をなす部分として非常に重要ですが、企業法務の世界において実務家がその職務上要求されるものは、さらに多岐に、また細部にわたるため、司法修習を修了したからといって即座に実務家としてのプラクティスを開始できるわけではありません。そのため、新人弁護士にとっては、入所後早期の段階で、企業法務の実務家としての基礎的なスキルとノウハウを迅速かつ効率的に身に付けることが肝要となります。
当事務所では、新人弁護士の入所後に1ヶ月程度の期間を設け、パートナーおよびシニア・アソシエイトが主体となり、それぞれの専門分野における業務内容の説明、必要とされる基礎的知識、仕事の進め方、基礎文献の紹介、所内の各スタッフとの協力のあり方等につき講義を行っています(新人研修)。
新人研修は、単なる一方通行のレクチャーに留まるものではなく、実践的なワークショップ(演習)形式の講義や、インタラクティブな形での討議が行われる対話形式の講義等をも採り入れ、新人弁護士が体系的かつ有機的な知識とノウハウをできるだけ短期間に習得できる内容となるよう、上記の教育研修委員会が継続的にプログラム内容の見直しを行い、その改善と充実に努めています。
【参考】 63期新人弁護士の入所研修のテーマ(一部)
「M&A概論」「会社法上の組織再編」「ファイナンス概論」「TOB規制」「インサイダー規制」「企業内容開示」「キャピタル・マーケッツ」「金融規制法プラクティス」「プロジェクト・ファイナンスとPFI」「アセット・ファイナンス」「労働法」「独禁法」「租税法」「国際訴訟」「中国・インド関係業務」「知的財産権の基礎」「契約書作成演習」「デュー・ディリジェンス演習」。
(2) International Lawyer Training & English Immersion Program (英語教育プログラム)
法律問題の国際化、経済取引の普遍化がますます進む状況の中で、当事務所は、日本の依頼者が海外との取引を行う際に我々に期待するものと、欧米の依頼者を含む全世界の依頼者が日本での投資ないし業務を行う際に我々に期待するものとを、それぞれ十分に理解し、国際業務に携わる弁護士として的確なサービスを提供するためには、英語により法律実務を処理する能力が非常に重要である、との理念を持っています。
このような理念に基づき、上記(1)の当初研修プログラムと併行する形で、新人弁護士のために、約1ヶ月にわたり毎日継続して英語教育のプログラムを集中的に行っています。このプログラムは、新人弁護士が法律実務における「英語脳」を身につけていく第一歩として位置づけられており、その履修を通じて、国際的な業務におけるリーガルマインドと国内外の依頼者の求めているものとをより良く理解し、従来英語に触れる機会が少なかった人達を含むすべての新人弁護士が自信をもって国際的な法律業務をスタートするための良きガイダンスとなるように、カリキュラムが組まれています。また、下記のとおり、当事務所は留学前の弁護士のためにも継続的な英語研修を行っていますが、このプログラムは、そのような継続研修へのスムーズな移行を助けるものともなっています。
【参考】 このプログラムに含まれるテーマ(一部)
国際的な依頼者のものの考え方ないし弁護士に求めているものの理解、英語による交渉術、米国の訴訟手続の概観、海外の関連分野における法制度の初歩的理解、英文書面作成のためのガイダンス、当事務所における主要な英語関連業務の理解等。
(3) チューター制度
入所したばかりの新人弁護士にとっては、業務を含むすべての環境が新しく触れるものであり、最初は慣れない環境に戸惑いや不安を感じたとしても無理はありません。当事務所では、新人弁護士が陥りがちなそのような心理状態を緩和し、円滑に事務所内環境に溶け込んでいくことを容易にするため、各新人弁護士にパートナー3名程度をチューターとして割り当てる体制を採っています。
チューターとなったパートナーは、新人弁護士と仕事を共にすることはもとより、新人弁護士への案件の適正な割り振りや仕事量の状況に留意し、必要に応じて仕事上あるいは生活上のアドバイスをするなど、新人弁護士にとっての良き相談役となるように努めています。なお、入所後間もない時期には、チューターとなったパートナー自身の案件を割り振られる場合も多いですが、仕事上の関係がチューターとの間で固定されるわけではなく、むしろ執務を重ねて事務所内環境に溶け込んでいく中で、比較的早期に様々な弁護士と幅広い分野の仕事をするようになっていくのが通例です。
(4) PC研修、OA研修、判例・文献検索ツール研修
多様化する依頼者からの要請にスピーディーに対応するために、各種のOA機器やリサーチ・ツールを適確かつ迅速に使いこなせる技能を習得することが、弁護士として必要不可欠なものとなってきています。
当事務所では、上記の新人研修の一環として、ワード、エクセル、メーラー等の主要なアプリケーション・ソフトウェアの操作、また、ファックス、コピー、プリンター等のOA機器、判例・文献検索ツール、当事務所に蓄積された過去の文書の検索ツール、当事務所ライブラリー所蔵図書の検索システム等の使用について、所内での研修および外部業者による講習を行っています。また、その後も、受講希望者を対象として、外部専門講師によるパワーポイント等の講習を随時行っています。

(1) 英会話レッスン
企業法務の実務家としての、英語による法律事務の処理能力の重要性についての当事務所の考え方は上記のとおりですが、それは必ずしも高いハードルではありません。英語について苦手意識を持っている新人弁護士は少なくありませんが、それまでの英語教育の過程を通じて基礎的な英語力は十分に有しており、定期的なアウトプットの機会を適切に得さえすれば、個人差はあっても英語力についての継続的かつ漸進的な向上は必ず図れるものであると考えています。
そのような観点から、留学前のアソシエイトを主な対象として、事務所が委嘱したネイティブ・スピーカーの教師による英会話のレッスン(1回40分程度)を、事務所内で週2回程度行っています。これにより、新人弁護士が仕事においても活用できる英語力のレベルアップが図られるとともに、留学の際の準備を容易にするものともなっています。
(2) 勉強会・研究会、外部セミナー等への参加
新たな法令や重要な法改正、最近の重要判例の紹介、当事務所で取り扱った最近の興味深い案件等につき、下記の各
プラクティス・グループが主体となって、自主的な所内勉強会・研究会を盛んに行っています。外部から講師を招聘しての所属弁護士向けレクチャーも実施しており、また、事務所が有用と認める外部のセミナー・研修等について、事務所費用で参加することも認めています。
上記の勉強会や研究会は基本的に全ての所属弁護士に対して開かれた集まりとなっており、また、勉強会や研究会が作成した成果物や資料については、同様に所内のイントラネットにおいて全弁護士がアクセス可能な形で共有されています。
(3) OJT(On the Job Training)
「実務家としての真の実力は、実際の案件の中で、依頼者との生のやりとりを通じて培われていくべきもの」という考え方が、当事務所として以前から維持している、新人教育に対する基本的な理念です。その意味において、OJTは、事務所として最も重視している新人教育の仕組みです。新人研修をはじめとする上記の様々な研修制度は、いずれも、OJTへの導入部分、あるいはOJTを補完するものとしてきわめて重要な要素ではあるものの、OJTとの関係では、あくまで補助的または副次的なものとして位置づけられているともいえます。定められた「形」がないのがまさにOJTというものの特徴であり、弁護士により、また案件により、多種多様な形をとって、事務所内で日々実践されています。(当事務所におけるOJTの様子については、
弁護士インタビューの記載もあわせてご参照下さい。)
入所後数年間の実務経験を経たアソシエイトは、海外留学(および海外での研修)あるいは国内研修のために、1年ないし2年程度事務所を離れ、各自研鑚を積むのが通例です。留学に際して事務所が金銭的なサポートをするほか、留学および海外研修のための有形・無形のサポートを事務所から行っています。留学先について特別の制約はありませんが、一般的には、米国・英国その他のコモン・ロー国のロースクールにおいて1年間の法学修士課程(LL.M.)を修了した後、さらに海外の法律事務所や企業等で1年程度の研修を行うのがこれまでの例では比較的多く見られるパターンとなっています。また、当事務所が国内外において有する豊富なネットワークを通じて、民間企業、あるいは官公庁その他の機関等における研修・出向等を行う機会が得られることもあります。
【参考】 現在の留学・海外研修・出向状況
所内におけるノウハウの蓄積と共有を第一義的な目的として、主に中堅・若手の弁護士が中心メンバーとなる形で、現在、10の
プラクティス・グループが組成されています。プラクティス・グループはいわゆる部門制とは異なり、事務所の全弁護士に対して開かれた固定的でない集まりですが、各グループの中心メンバーは、それぞれ、取引実例や当事務所による取扱案件の研究、最近の判例・学説、新しく制定された法令や商法等の主要法令の改正についての研究や問題点の検討、論点メモの作成等の活動を精力的に行っています。(各プラクティス・グループの詳細については、上記リンク先をあわせてご参照下さい。)